トスカーナの青い空32021年02月20日 09:35

  
サンマルコ修道院 正面


 だが絶頂を極めたフィレンツェも時代の流れには逆らえず、衰退の道をたどり始める。現状に不安を覚え、何かを求めていた人々の前にフェッラーラ出身のドメニコ派の修道僧ジロラモ・サヴォナローラが現れた。彼はサン・マルコ修道院の院長になり、漠然とした不安と不満をかかえた人々をその熱弁で煽動していった。フィレンツェの人々は、その異常なまでに禁欲的で、贅沢を廃する考え方、神の怒りをかった享楽的なフィレンツェ市民は滅びていくだろうという終末思想に共鳴していった。昨日まで美しいといわれていたギリシャ風の豊かな胸の女性の絵が、退廃的だと攻撃され、一昨年にお祭りに着た衣装が華美で贅沢だといわれ、市民の間で正義の名の下に略奪が行われた。

 ことはだんだんエスカレートし、サヴォナローラに心酔している少年少女たちが集団で家々に足を運び、優雅な曲線の美しい燭台やプラトンの革装丁の本、女性の豊満な身体をおおらかに表現した数々の名画を没収し、シニョリーア広場で燃やした。うずたかく積み上げられた貴重な品々が、天にも届くような真っ赤な炎を上げ、一瞬のうちに灰になった。

 

サンマルコ修道院 回廊

  

 しかし、やがて彼のことを快く思っていなかったフランシスコ会や、少しの妥協も許さぬ彼の極端な考え方に疑問を持ち始めた市民たちによってサヴォナローラは捕らえられ、シニョリーア広場で公開のもとに火刑に処せられた。

 今は観光客でにぎわっているこの広場は、実はこんな暗い血なまぐさい過去をもっている。足下の石畳には、あの時の血がしみこんでいるかもしれない。歴史は、いつも一瞬の栄光の影に、数えきれないほどの陰謀と裏切りを秘めている。