ミラベル宮殿の花嫁 ザルツブルグ2019年03月02日 17:13

ザルツァハ川を渡る2月の風は冷たい
純白のウェディングドレスに身をつつんだ
黒い瞳の東洋の少女の頬も心なしか紅潮している

中世の砦ホーエンザルツブルグ城が
悠然と街を見下ろしている
黒いモーニングに身をつつんだ
黒い髪のりりしい花婿は
緊張の面持ちで花嫁を見つめている

北風の精が花嫁に祝福のキスを贈る
一瞬、レースのヴェールが
白鳥の羽のように舞い上がり
花嫁は恥じらいの表情を見せる

広場には市がたち
大聖堂の鐘が時を告げる
モーツァルトの時代から変わらぬ石畳の通りが
永遠の愛を誓った二人の足音を刻む


 以前、知人がオーストリアのザルツブルグにあるミラベル宮殿で結婚式を挙げた。私も参列させていただいた。2月の寒い時期で、小雨模様の天気だったので、中世の町並みを残す美しい景色はモノトーンの印象が強いが、幸せのお裾分けをしてもらったようにとても素敵な思い出として今も残っている。
 ウェディングランチをいただいたレストランは15世紀初頭にさかのぼる歴史をもつ老舗のホテルの中にあり、それはまたモーツァルトの生家のすぐ近くであった。おそらく増改築を何度も重ねたのであろう建物の内部は複雑に入り組んで迷路のようであり、廊下などは敢えて古い石材がそのまま使用されている所などもあるが、寄木細工の床やクラシックな木製の調度品などはピカピカに磨きこまれていて、タイムスリップして中世の館に迷い込んでしまったかのような不思議な気分にさせられた。