トスカーナの青い空12021年02月06日 23:30

 

  5月のよく晴れたトスカーナの青い空の下、緑の山々に囲まれて、赤煉瓦のフィレンツェの町並みが広がる。アルノ川をはさんで南側の小高い丘の上に立つピッティ宮に隣接するボーボリ庭園は、街中の賑わいが嘘のように静かで、ゆったりした時間が流れている。昼下がりの明るい陽ざしの中で、大きなマロニエの樹が眩しいくらいにキラキラと輝いている。ぎっしりとある葉がわずかな風に揺れ、淡い緑と濃い緑のモザイク模様を作り出す。マロニエのいくつもの小さな白い花が一つの塊になって葡萄の房のように揺れている。ユダの樹が濃いピンクの花を枝いっぱいにつけている。

 

 テラス状になった広い庭園の中央の道を登っていくと、噴水の水が涼しげな音をたてて水盤にこぼれていた。噴水の中央に立つ三つ又をもった海の神ポセイドンが、その力強い姿を水の上に映している。円錐形の背の高い糸杉の濃い緑に挟まれた細い小路を恋人たちがしっかりと肩を抱き合ってゆっくりと散歩している。一番高い所まで来ると左側は要塞の壁に遮られ、眼下にはまるでシルクの絨毯を広げたような明るい緑の郊外の風景が遠くまで広がっていた。コバルトブルーの空に所々わた菓子のような真っ白い雲が浮かんでいる。太陽がその雲の間に隠れると、地上の緑の絨毯は全体的に濃淡の差が無くなり、ダークグリーンになる。再び太陽が雲間から顔を出すと、世界は失った光を取り戻し、糸杉の二等辺三角形の影をくっきりと刻む。さわやかな風が頬を撫でてゆく。

 



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