ナブール焼き チュニジア2019年03月21日 16:38

 ナブールはチュニジア北東部の地中海に面した沿岸都市である。チュニジアのリゾート地として有名なハマメットからも車で15分ほどの距離で、青い空と青い海とあふれるほどの陽の光を楽しむことができる。しかし、この町の名を有名にしているのは風光明媚な景色というわけではなく、ナブール焼きと呼ばれる陶器である。元は17世紀にスペインのアンダルシア人が渡ってきて、その製法を伝えたと言われている。一度白塗りした背景の上に、鮮やかな色彩で幾何学模様や植物、魚、鳥かごなどが描かれた大皿や取り皿、小鉢、調味料入れ、花瓶やタイルなどがところ狭しと店先に並んでいる。

  

 

 陶器を作る作業は工程別に分かれていて、手作業で仕事がすすめられていく。粘土を練って形を作った後、まず全体を白に染めた皿や花瓶、小物などに、熟練の職人が黒の筆で輪郭を描いていく。

  

 それが乾いたところに、あどけない少女から年輩の女性までが横に一列に座って楽しそうにおしゃべりをしながら、分業でそれぞれ自分の受け持った色を塗っていく。明るいブルーやグリーンが加わると、とたんに絵が生き生きとしてくる。壁に飾られている直径25~30cmぐらいの絵皿は、幾何学模様や植物をモチーフにしたもの、オスマントルコ時代の宮廷の生活を描いたもの、アラビア語の文字が描かれたものなど、それぞれ特徴がある。まったく同じ絵柄と思っているものでも、よく見ると、筆の勢いで多少かすれているところがあったり、逆に部分的に色絵の具が固まって少し盛り上がっていたりとか、曲線のラインが微妙に異なっていたりとか、手描きの素朴な良さが感じられる。

  

これはよく一緒に売られていることが多い装飾タイルについても同じことが言える。2つとして同じものはない。図柄としては、大きく2つに分類することができるかもしれない。まず一つは正方形のタイルを12枚ぐらい並べて1つの絵柄を成しているものである。たとえば、実際に地中海沿岸の街でよく見かけるアーチ型の装飾のほどこされた美しいブルーの扉や、鳥や鳥かご(ワイヤー細工の丸い鳥かごはナブールのもう一つの名産で、その繊細な美しさは芸術的だ)と植物のモチーフなどを表したものや海辺の景色などを絵画のように描いたものである。そして、もう一つは、20cm四方ぐらいの比較的大きなタイルに幾何学模様が描かれているもので、こちらは同じ模様であれば、縦・横自由自在に何枚でもつなげていけるような実用的なタイルである。どちらも見事で、店内の壁一面に飾られたタイルはいつまで見ていても飽きない。

※ナブールを訪れたのはだいぶ前のことなので、陶器の制作方法が今は変わっているかもしれません。


コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック