聖ヨハネ騎士団(マルタ騎士団)の足跡を訪ねて マルタ ― 2019年01月20日 23:29

ヴァレッタは、ヨーロッパ大陸と北アフリカの間の地中海に浮かぶマルタ共和国の首都である。そこには、16世紀の半ば、ロードス島を追われた聖ヨハネ騎士団が神聖ローマ帝国の皇帝カール5世からマルタ島をもらいうけ、堅固な要塞都市として築いた蜂蜜色の石灰岩の町並みが今も残っている。

聖ヨハネ騎士団は、12世紀の初めに十字軍の負傷者の看護や貧者の救済のための医療従事者の団体としてパレスチナに創設された。ヴァレッタでは、当時のままの外観が残った騎士団施療院跡なども見学できる。
騎士団はキリスト教国の富裕階級の貴族の子弟から成っていたそうだ。実際には長男は家系を継ぐため領地に残るため、次男以下の子弟たちがなったようだ。入団の際にはどんなに立派な鎧や剣などの武具等を持ち込んでもよいが、一度騎士になった後は亡くなった後でさえ遺体はもちろんのこと何一つ故郷に持ち帰ることは禁じられていたと聞くと、映画などの華やかな騎士のイメージと違って、どこか哀愁を感じる。

この聖ヨハネ騎士団がマルタ騎士団とも呼ばれるようになる。マルタ騎士団の十字架はそれぞれの長さが同じで、楔形のようなその形は8つの剣を表しているとも言われている。

この8という数字は騎士団の言語別の8つのグループと8つの美徳を表している。つまり、プロバンス、オーベルニュ、フランス、イタリア、ドイツ、イングランド、アラゴン、カスティーリャ・レオン・ポルトガルであり、聖ヨハネ大聖堂の中には、それぞれの騎士団ごとにきらびやかな礼拝堂が並んでいる。8つの美徳とは、忠誠心、敬虔さ、率直さ、勇敢さ、名誉、死を恐れないこと、弱者の庇護、教会への敬意である。

16世紀の後半に、マルタ騎士団の守護聖人のためにヴァレッタの中心地に聖ヨハネ大聖堂が建てられた。床から天井まで壮麗な彫刻や絵画などで覆われているその大聖堂は、今も観光客でも目にすることができる。足を踏み入れた途端、目をひかれるのが、まるでトランプの絵札を並べたような、大理石の床一面の装飾だ。それらは一つ一つが有力家系の騎士たちの墓碑であり、その下には今も騎士たちが永遠の眠りについているそうである。

この大理石のモザイク画の中でよく見かけるモチーフがある。カマを持つ骸骨とラッパを吹く天使である。骸骨は現世を、天使は天国を象徴しているそうだ。この騎士は、どこからやって来て、どんな人々に出会い、どんな一生を送ったのだろうかとしばし遠い異国の騎士に想いをはせた。
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