ムーミンパパ海へいく ~ソーダーシャル島~ ― 2019年02月11日 16:42
白亜の大聖堂を背中に、ヘルシンキの港からフィンランド湾を出て、いくつかの小島の横を通り抜けて、小さな客船は水平線を目指してゆっくりゆっくりと進む。

やがて、遥か前方に、海の中から突き出た煙突のように灯台のある島が見えてくる。もう間もなく到着するのだろうと思ったが、いっこうにその気配がない。海上では視界を遮るものがないので、かなり遠くの物でも目にすることができるが、実際には想像以上に距離があるものなのだ。ミニチュアの模型のような遠くの灯台にじっと目をこらして、船が近づくのをひたすら待つ。

少しずつズームアップされて、ついに灰色の岩だらけの平べったい小さな島とそこにスクッとそびえるベージュ色の灯台が目の前に現れる。

そこは、スウェーデン語系フィンランド人のトーベ・マリカ・ヤンソン(1914-2001)氏が書いた小説「ムーミンパパ海へいく」のモデルになった島と言われているフィンランドのソーダーシャル島である。小説の中では、快適なムーミン谷の生活の中にもはや自分のやるべき事を見出せなくなったムーミンパパの発案で、ムーミン一家は灯台以外何もない島での生活を始めることになる。鍵がかかって灯りの消えた灯台と謎の漁師がこの小さな岩だらけの島のすべてだ。

ムーミンパパは大自然を前に若いころの冒険心を取り戻し、大切な家族を守るために自分のやるべきたくさんのことを再び見出し、流木でベッドを作ったり、魚釣りに行ったり、時には海について哲学的に考えたり、満ち足りた時間を過ごしている。
息子のムーミントロールは、月明かりの下の夜の浜辺の美しさに魅了されたり、独りで島を探検してしげみの中に自分だけのスペースを作ったり、海と風と自然が織りなす恵みと美しさと驚異の中で、それらを愛おしく思いながら成長していく。
一見自由勝手で我が儘のようにも見える独立心旺盛な養女のちびのミイ。でも、ミイの辛辣なセリフの多くは、表立って口にはしないものの心の奥の真実の声だ。

そして、これら一家をいつも優しく寛大な気持ちで見守り、カンテラのように家族の心を明るく灯してくれるムーミンママ。

ソーダーシャル島は、すぐに1周できてしまうほど本当に小さい。小説のように、薪木がきれいに丸く積み上げられている。ヒースのピンクの花が海風に揺れている。

灯台は、現在は灯台としての役目は終わり、自由に内部を見学することができる。木製の狭い螺旋階段が上へ上へと続いている。途中、昔の島の風景を写した白黒写真やヤンソン氏のイラストが飾られ、ムーミンパパが葉巻を加えながら座りそうな木製のユリ椅子が置かれている。

窓からは、夏の青い空と海が水平線の彼方まで見渡せる。最高の眺めだ。

しかし、いつも穏やかな青空ばかりとは限らない。海の荒れ狂う嵐の日、あるいは冬の長いこの地方で、昼でも日差しのとぼしい毎日を、決して広いとは言えないこの灯台の中で、来る日も来る日も小さな窓の外に吹きすさぶ風の音を聞きながら厳寒の中で過ごした灯台守たちの生活はさぞや厳しかっただろう。

コメント
_ sawa ― 2019年02月14日 14:17
_ 木漏れ日 ― 2019年02月14日 23:29
ぜひ、読んでみてくださいな。
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小さい頃に見ていたアニメが懐かしいです。
原作は実は読んだことがないので一度読んでみたいな。