風のかたみ 福永武彦 ― 2019年05月12日 15:35
時は今から約千年をさかのぼった京の都大路、月もないしんと静まりかえって人通りの絶えた夜更けの通りにどこからともなく美しい笛の調べが流れている。それは荒涼とした芒の原で道に迷い、怪しげな陰陽師と旅の途中の京の笛師と遭遇した後、京の親戚筋の中納言家にきてからまもない信濃の国の武家の次男である次郎信親の奏でる笛の音である。次郎は、亡き叔母の娘でもある中納言家の末娘である萩姫に心をよせ、萩姫は一度しか逢ったことのない左大臣家の若君のことを想い、快活な笛師の娘楓は次郎を愛している。そんな折、都では正体不明の不動丸と称する盗賊集団が窃盗を繰り返していた。次郎を中心に綾なす恋の行方に、得体の知れない陰陽師と不動丸が暗い影を落としている。
王朝時代の暮らしや衣装、調度品なども美しく描かれているこの小説は、福永武彦氏(1918~1979)の著作である。福永氏の作品の中では時代小説というのは珍しく、知名度の高い作品というわけではないかもしれないが、ふと読み返してみたくなり、数十年ぶりにじっくりと作品を味わった。心理描写やストーリー展開の面白さはもとより、王朝時代の雅な世界が美しく再現されていて、お気に入りの作品の一つである。
王朝時代の暮らしや衣装、調度品なども美しく描かれているこの小説は、福永武彦氏(1918~1979)の著作である。福永氏の作品の中では時代小説というのは珍しく、知名度の高い作品というわけではないかもしれないが、ふと読み返してみたくなり、数十年ぶりにじっくりと作品を味わった。心理描写やストーリー展開の面白さはもとより、王朝時代の雅な世界が美しく再現されていて、お気に入りの作品の一つである。
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